nptのドキュメントです。
参照元:ANSI Common Lisp npt
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本章はnpt特有の機能について、代表的なものを紹介します。
nptで使用するコマンドと変数は、npt-system
パッケージに存在します。
下記の内容について説明します。
ed
関数によるエディタ起動require
関数の動作load-logical-pathname-translations
の読み込みpathname
の使用random-state
の初期値load
関数の引数nptコマンドの引数は下記の変数に格納します。
npt-system::*arguments*
値は配列であり、第一要素がnpt
のコマンド、 第二引数以降がコマンドの引数です。
例として下記のコマンドを実行したことを考えます。
$ npt -- 10 20 30
*
引数の--
は、これ以降の引数がnptコマンドの引数になるという指定です。
値は次のようになります。
* npt-system::*arguments*
#("npt" "10" "20" "30")
環境変数は下記の変数に格納しています。
npt-system::*environment*
値はハッシュテーブルです。
例えば、ホームディレクトリを表す$HOME
を取得するには 次のように実行します。
$ npt
* (gethash "HOME" npt-system::*environment*)
"/home/username"
T
*
下記のコマンドでガベージコレクタを起動します。
(npt-system:gc)
ガベージコレクタはheap領域が圧迫されていれば自動的に実行されますが、 タイミングによっては判定が間に合わずにメモリ不足に陥る可能性があります。
上記のコマンドを定期的に実行することで回避できるかもしれません。
もしメモリ不足が生じた場合はLISP ABORT
します。
関数仕様を作成しました。
Lisp関数仕様 - システム関数
下記のコマンドでコアファイルを作成できます。
(npt-system:savecore file)
本命令はserious-condition
のsavecore
conditionを実行してnptを終了させます。
正しくsavecore
conditionで終了したら、コアファイルの保存が始まります。
作成したコアファイルを読み込むためには、nptコマンドの--core
引数を使用します。
関数仕様を作成しました。
Lisp関数仕様 - システム関数
下記のコマンドでnptを終了します。
(npt-system:exit code) (npt-system:quit code)
上記2つは全く同じものです。
nptのプロンプトで(exit)
と(quit)
を実行できるように、 標準でcommon-lisp-user
パッケージにimport
されています。
本命令はserious-condition
のexit
conditionを実行してnptを終了させます。
正しくexit
conditionで終了したら、引数の値を終了コードにしてプロセスを終了させます。
関数仕様を作成しました。
Lisp関数仕様 - システム関数
ed
関数によるエディタ起動Common Lispの関数ed
はエディタを起動します。
この機能に対応しているのはFreeBSD, Linux, Windowsです。
起動するエディタは設定可能であり、 下記の順番でエディタのコマンド名を取得します。
npt-system::*ed-program*
から文字列を取得EDITOR
から文字列を取得npt標準のエディタとは、 FreeBSD/Linuxならvi
、 Windowsならnotepad.exe
、 それ以外ならed
です。
require
関数の動作Common Lispの関数require
は引数の名前からモジュールを読み込む機能です。
nptでの実装はsbclのものとほぼ同じにしてあります。
require
は実行されると、変数npt-system::*module-provider-functions*
を 関数のリストとして読み込み、 最初の関数から順にrequire
の引数を指定して実行していきます。
もしどれかの関数がNIL
以外の値を返却したら、 ロードが成功したとみなして処理を終了します。
例を示します。
defun require-tmp (var)
(load (merge-pathnames
(format nil "~(~A~).lisp" var)
("/tmp/")))
#p
push #'require-tmp npt-system::*module-provider-functions*)
(
require 'aaa) (
実行した結果を示します。(ただし失敗例)
ERROR: NPT-SYSTEM::SIMPLE-FILE-ERROR
Cannot open file #P"/tmp/aaa.lisp".
0. ABORT Return to eval-loop.
[1]* 0
ファイル/tmp/aaa.lisp
を読み込もうとしているのがわかります。
EastAsianWidthとは、Unicodeの全角・半角を表すものです。
nptでは全角が2文字、半角が1文字として、 format
やPretty Printingの出力を整形しています。
EastAsianWidthに関する関数は下記の3つです。
defun eastasian-width (var) ...)
(defun eastasian-get (var) ...)
(defun eastasian-set (var size &optional errorp) ...) (
関数仕様を作成しました。
Lisp関数仕様 - システム関数
eastasian-width
オブジェクトからEastAsianWidthのサイズを返却します。
引数var
が整数の場合は、Unicodeの文字としてサイズを返却します。
引数var
が文字の場合は、その文字のサイズを返却します。
引数var
が文字列の場合は、全ての文字のサイズの合計を返却します。
第1返却値はEastAsianWidthのサイズです。
第2返却値はサイズが正しく求められたかどうかのboolean値です。
eastasian-get
EastAsianWidthは全角と半角の判定と書きましたが、 正確には文字に対して、N
, A
, H
, W
, F
, NA
の 6つのカテゴリに分類されます。
本関数はそれぞれのカテゴリが、何文字分に相当するかを取得します。
引数var
はstring-designator
であり、カテゴリの名前を表します。
第1返却値はEastAsianWidthのサイズです。
第2返却値はカテゴリを表すsymbolであり、エラーは‘NIL`です。
例を示します。
* (npt-system:eastasian-get :na)
1
NPT-SYSTEM::NA
* (npt-system:eastasian-get :hello)
0
NIL*
eastasian-set
EastAsianWidthのカテゴリのサイズを設定します。
引数var
はカテゴリをあらわすsymbolです。
引数size
はカテゴリに対するサイズです。
引数&optional errorp
がerror
condition発生の有無です。
load-logical-pathname-translations
の読み込みload-logical-pathname-translations
とは、 論理パス名の設定をファイルから読み込む機能です。
ファイルの読み込む場所は処理系依存です。
nptでは下記のspecial変数をもとにファイルを探索します。
npt-system::*load-logical-pathname-translations*
load-logical-pathname-translations
関数は 文字列を引数として受け取り、対応する設定ファイルを読み込みます。
例えば次のように実行されたことを考えます。
load-logical-pathname-translations "hello") (
設定ファイルが次の場所に存在するとします。
/tmp/host/hello.txt
この場合は、special変数の値を次のように設定します。
setq npt-system::*load-logical-pathname-translations* #p"/tmp/host/*.txt") (
動作確認をしてみます。
まずは適当な設定ファイルを配置します。
ファイルの内容を下記に示します。
"*.*" "/home/lisp/")
("path;to;*.*" "/home/path/") (
設定ファイルを配置します。
$ cd /tmp
$ mkdir host
$ cd host
$ vi hello.txt
上記の内容を入力
$
nptにより次の命令を実行します。
load-logical-pathname-translations "hello")
(t
->
translate-logical-pathname "hello:name.txt")
("/home/lisp/name.txt"
-> #P
translate-logical-pathname "hello:path;to;name.txt")
("/home/path/name.txt" -> #P
正しく変換されているのがわかります。
pathname
の仕様pathname
とはファイル名を表すオブジェクトです。
pathname-host
は、ファイル名がどの環境に属しているかを表します。
nptでは次の値を使用します。
pathname-host |
環境 |
---|---|
npt-system::unix |
Unix環境 |
npt-system::windows |
Windows環境 |
文字列 | 論理パス |
初期値は*default-pathname-defaults*
のpathname
オブジェクトに 設定されているhost
の値です。
parse-namestring
関数では、host
の値によって文字列を分析する方法が決まります。
もし実行している環境がUnix上であっても、host
の値を変更することで Windows用のファイル名を認識することができます。
例えば下記の通り。
* (parse-namestring "C:\\Windows\\" 'npt-system::windows)
"C:\\Windows\\"
#P11
* (pathname-directory *)
"Windows") (:ABSOLUTE
equal
関数はpathname
が同一かどうかを調べることができます。
もしnamestring
が同じでもhost
が違う場合は同一ではありません。
* (parse-namestring "notepad.exe" 'npt-system::windows)
"notepad.exe"
#P11
* (parse-namestring "notepad.exe" 'npt-system::unix)
"notepad.exe"
#P11
* (equal ** *)
NIL
equal
関数は、host
の値を見て文字列の大文字小文字の判定を行います。
Unix環境では大文字小文字を別とみなし、 Windows環境では同一とみなします。
* (equal
parse-namestring "Hello.TXT" 'npt-system::unix)
(parse-namestring "hello.txt" 'npt-system::unix))
(
NIL* (equal
parse-namestring "Hello.TXT" 'npt-system::windows)
(parse-namestring "hello.txt" 'npt-system::windows))
( T
pathname-device
は、Unixと論理パスでは無視されます。
Windowsでは、ファイルの種別か、あるいはドライブレターが設定されます。
* (pathname-device (parse-namestring "C:\\Windows\\" 'npt-system::windows))
"C"
* (pathname-device (parse-namestring "notepad.exe" 'npt-system::windows))
NIL* (pathname-device (parse-namestring "\\\\.\\COM1" 'npt-system::windows))
NPT-SYSTEM::DEVICE
pathname-version
は、UnixとWindowsでは無視されます。
論理パスでは規則に従って使用されます。
* (pathname-version (logical-pathname "test:hello.txt"))
:NEWEST* (pathname-version (logical-pathname "test:hello.txt.999"))
999
random-state
の初期値random-state
とは乱数を生成するときに使用するオブジェクトです。
nptではxorshiftという乱数の生成器を使用しており、 random-state
には128bitの内部状態を保有しています。
初期値は関数make-random-state
に引数t
を渡すことで、 可能な限りデタラメな値を設定できます。
例えば下記の通り。
* (make-random-state t)
#x85A5B416389D9716A81B4F43F76E922A>
#<RANDOM-STATE * (make-random-state t)
#xE51C94EB01856FEAC5B1EC8C90E3107E> #<RANDOM-STATE
乱数の初期値を決めることは簡単ではないので、 基本的にはOSに初期値を設定してもらいます。
本章では、乱数の初期値をどのように取得しているか説明します。
コンパイルモードがFreeBSDかLinuxの場合は、 ファイル/dev/urandom
から乱数の初期値を取得します。
読み込むデバイスは/dev/random
ではないことに注意してください。
FreeBSDでは両者に違いはありませんが、Linuxでは/dev/random
の方が安全です。
nptでは安全性より利便性を優先し、/dev/urandom
を使用することにしました。
/dev/urandom
から、256byteのデータを受け取り、 それをMD5でハッシュに送り、 MD5の内部状態をそのままxorshiftの内部状態に設定します。
もし/dev/urandom
の読み込みが失敗した場合はエラーです。
コンパイルモードがWindowsの場合は、 Advapi32.dll
の関数SystemFunction036
、 通称RtlGenRandom
関数から初期値を取得します。
RtlGenRandom
から、256byteのデータを受け取り、 それをMD5でハッシュに送り、 MD5の内部状態をそのままxorshiftの内部状態に設定します。
もしRtlGenRandom
の読み込みが失敗した場合はエラーです。
ファイル/dev/urandom
を読み込もうとします。
もし値が取得できた場合は初期値に使用しますが、 値が取得できなかった場合はあきらめて、 時刻などを乱数の初期値にします。
FreeBSD, Linux, Windowsとは違い、 初期値用のデバイスが読み込めなかった場合でも エラーが生じることはなく続行します。
load
関数の引数load
関数は、Lisp式が記述されたテキストファイルか、 compile-file
関数により生成されたバイナリファイル(通称faslファイル)を 読み込むことができます。
どちらを読み込むかはpathname-type
が"FASL"
であるかどうかで判定されますが、 load
関数の引数:type
により種別を指定することもできます。
テキストファイルを読み込む場合
load file :type :lisp) (
fasl
ファイルを読み込む場合
load file :type :fasl) (
load
関数の第一引数はpathname
だけではなく、memory-stream
を指定することができます。
ただしmemory-stream
はpathname
を持たないため、 :type
引数を指定する必要があります。
実行例を示します。
let ((input (npt-system:make-memory-io-stream))
(
(output (npt-system:make-memory-io-stream)))with-open-file (stream input :direction :output)
(format stream "(format t \"Hello~~%\")"))
(with-open-file (stream input :direction :input)
(compile-file stream :output-file output))
(file-position output :start)
(load output :type :fasl)) (
実行結果
Hello
T
この例では、変数input
にテキストファイルを書き込み、 compile-file
関数によって変数output
にfaslファイルを出力します。
出力されたoutput
のファイルポインタを先頭に戻してから、 load
関数により生成されたfaslファイルを実行します。