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nptのドキュメントです。
参照元:ANSI Common Lisp npt
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6.1 脱出の操作

脱出の操作を説明ます。

以前、脱出の理由を5つ挙げました。

この中で、tagbody/goblock/return-fromは レキシカルな環境での使用を前提としているため、 C言語では使用不可とします。

残り3つの操作はC言語でも実装可能です。
脱出の操作は、発生と終了だけではなく割り込みも考えなくてはいけません。
脱出の割り込みとは、unwind-protectのことです。

まとめると、本章では下記の機能について説明します。

6.2 catch/throw

脱出の操作で最も簡単なのがcatch/throwです。

catchはスタックフレームに対してsymbolを登録します。
よってlisp_push_controlは必ず実行する必要があります。
登録は下記の関数を使用します。

void lisp_catch(addr symbol);

throwは下記の関数を使用します。

int lisp_throw_(addr symbol);

throw関数は現在のスタックフレームから順に遡って行き、 引数symbolに対応するcatchが無い場合はerror、 存在する場合はcatchの脱出を行います。
必ず脱出するため、戻り値は判定するまでもなく0以外です。

脱出中は、どこまで遡るかというスタックフレームの位置情報を保有しており、 現在のスタックフレームが脱出の到達地点に達したかどうかは 下記の関数を使用することで確認できます。

int lisp_break_control(void);

現在脱出中でありかつ現在のスタックフレームが 到達地点にいる場合は真(0以外)を返却します。
catch/throwの場合は、この関数が真のときに 非脱出に切り替えることでthrowが完了します。

非脱出に切り替える関数は下記のとおりです。

void lisp_reset_control(void);

手順をまとめると次のようになります。

例として下記の文を示します。

(catch 'hello
  (throw 'hello 222)
  333)

throwにより222が返却されるので、333は無視されて 全体の返却値は222となります。

int throw_hello_222_(addr x)
{
    lisp_fixnum(x, 222);
    lisp_set_result_control(x);
    if (lisp_intern8_(x, NULL, "HELLO"))
        return 1;

    return lisp_throw_(x);
}

int main_call_(addr x)
{
    addr control;

    lisp_push_control(&control);
    /* (catch 'hello ...) */
    if (lisp_intern8_(x, NULL, "HELLO"))
        goto escape;
    lisp_catch(x);
    /* (throw 'hello 222) */
    if (throw_hello_222_(x))
        goto escape;
    /* (values 333) */
    lisp_fixnum(x, 333);
    lisp_set_result_control(x);
escape:
    if (lisp_break_control())
        lisp_reset_control();
    return lisp_pop_control_(control);
}

int main_lisp(void *ignore)
{
    addr control, x;

    lisp_push_control(&control);
    x = Lisp_hold();
    if (main_call_(x))
        goto escape;
    lisp_result_control(x);
    if (lisp_format8_(NULL, "RESULT: ~A~%", x, NULL))
        goto escape;
escape:
    return lisp_pop_control_(control);
}

実行結果はRESULT: 222です。

6.3 handler-case

基本的な構成はcatch/throwと変わりません。
conditionの登録は下記の関数を使います。

int lisp_handler_case_(addr name, addr call);

そしてthrowにあたるのがsignalerrorです。
例文を下記に示します。

int main_call_(addr x)
{
    addr control, y;

    lisp_push_control(&control);
    y = Lisp_hold();
    /* handler-case */
    if (lisp_intern8_(x, NULL, "AAA"))
        goto escape;
    if (lisp_eval8_(y, "(lambda (c) (declare (ignore c)) 222)"))
        goto escape;
    if (lisp_handler_case_(x, y))
        goto escape;
    /* (signal 'aaa) */
    if (lisp_eval8_(NULL, "(signal 'aaa)"))
        goto escape;
    /* (values 333) */
    lisp_fixnum(x, 333);
    lisp_set_result_control(x);
escape:
    if (lisp_break_control())
        lisp_reset_control();
    return lisp_pop_control_(control);
}

int main_lisp(void *ignore)
{
    addr control, x;

    lisp_push_control(&control);
    x = Lisp_hold();
    if (lisp_eval8_(NULL, "(define-condition aaa () ())"))
        goto escape;
    if (main_call_(x))
        goto escape;
    lisp_result_control(x);
    if (lisp_format8_(NULL, "RESULT: ~A~%", x, NULL))
        goto escape;
escape:
    return lisp_pop_control_(control);
}

実行結果はRESULT: 222です。

6.4 restart-case

構成はhandler-caseと同じです。

restartオブジェクトを生成し、 現在のスタックフレームに対して登録することで実現します。
restartオブジェクトは下記の関数で生成します。

void lisp_restart_make(addr x, addr name, addr call, int casep);

restartの登録は下記の関数を使います。

void lisp_restart_push(addr restart);

使用例をあげます。

int main_call_(addr x)
{
    addr control, y;

    lisp_push_control(&control);
    y = Lisp_hold();
    /* restart-case */
    if (lisp_intern8_(x, NULL, "HELLO"))
        goto escape;
    if (lisp_eval8_(y, "(lambda () 222)"))
        goto escape;
    lisp_restart_make(x, x, y, 1);
    lisp_restart_push(x);
    /* (invoke_restart 'hello) */
    if (lisp_eval8_(NULL, "(invoke-restart 'hello)"))
        goto escape;
    /* (values 333) */
    lisp_fixnum(x, 333);
    lisp_set_result_control(x);
escape:
    if (lisp_break_control())
        lisp_reset_control();
    return lisp_pop_control_(control);
}

int main_lisp(void *ignore)
{
    addr control, x;

    lisp_push_control(&control);
    x = Lisp_hold();
    if (main_call_(x))
        goto escape;
    lisp_result_control(x);
    if (lisp_format8_(NULL, "RESULT: ~A~%", x, NULL))
        goto escape;
escape:
    return lisp_pop_control_(control);
}

実行結果はRESULT: 222です。

6.5 unwind-protect

unwind-protectは、第一引数の式を実行した後、 cleanupフォームを実行する前に下記の値の退避が必要です。

脱出情報とは、現在の脱出モードと 脱出先のスタックフレームの情報です。
返却値の情報とは、list_result_controlなどで取得できる値であり、 valuesの値そのもののため、ひとつではなく複数の値が対象となります。

unwind-protectを実行する前に 現在の状態を一括して退避しておき、 cleanupフォームを実行した後で状態をロールバックさせます。

下記の関数は、脱出情報と返却値を同時に保存する命令です。

void lisp_save_control(addr *ret);

情報はhold変数と同様、スタックフレームを利用して保存します。
保存後は下記の関数を用いて非脱出に移行します。

void lisp_reset_control(void);

もともと非脱出の場合でも実行はできます。

それでは保存が終わりましたので、cleanup処理を実施します。
もしcleanup処理中に新たな脱出が生じた場合は、 lisp_save_controlで保存した情報は無視して、 最新の脱出処理を優先させます。

無事cleanup処理が完了したら、下記の関数で復元します。

void lisp_rollback_control(addr value);

最後にlisp_pop_control_を実行して保存情報を破棄します。

実行例を示します。
下記の例では、返却値の保存と復元がされたことを示しています。

int main_lisp(void *ignore)
{
    addr control, save, x;

    lisp_push_control(&control);
    x = Lisp_hold();
    /* 100 */
    lisp_fixnum(x, 100);
    lisp_set_result_control(x);
    /* save */
    lisp_save_control(&save);
    lisp_reset_control();
    /* 200 */
    lisp_fixnum(x, 200);
    lisp_set_result_control(x);
    /* rollback */
    lisp_rollback_control(save);
    lisp_result_control(x);
    lisp_format8_(NULL, "RESULT: ~A~%", x, NULL);
    return lisp_pop_control_(control);
}

実行結果はRESULT: 100です。