Macro DEFSTRUCT
defstruct
name-and-options [documentation] {
slot-description}
*
=> structure-name
name-and-options::= structure-name | (structure-name [[options]])
options::= conc-name-option |
{constructor-option}* |
copier-option |
include-option |
initial-offset-option |
named-option |
predicate-option |
printer-option |
type-option
conc-name-option::= :conc-name | (:conc-name) | (:conc-name conc-name)
constructor-option::= :constructor |
(:constructor) |
(:constructor constructor-name) |
(:constructor constructor-name constructor-arglist)
copier-option::= :copier | (:copier) | (:copier copier-name)
predicate-option::= :predicate | (:predicate) | (:predicate predicate-name)
include-option::= (:include included-structure-name {slot-description}*)
printer-option::= print-object-option | print-function-option
print-object-option::= (:print-object printer-name) | (:print-object)
print-function-option::= (:print-function printer-name) | (:print-function)
type-option::= (:type type)
named-option::= :named
initial-offset-option::= (:initial-offset initial-offset)
slot-description::= slot-name |
(slot-name [slot-initform [[slot-option]]])
slot-option::= :type slot-type |
:read-only slot-read-only-p
conc-name - 文字列指定子
constructor-arglist - boa
ラムダリスト
constructor-name - シンボル
copier-name - シンボル
included-structure-name - すでに定義されている構造体の名前。 派生された型は許されず、 構造体名に展開されるものも禁止されることに注意して下さい。
initial-offset - 非負の整数
predicate-name - シンボル
printer-name - 関数名かラムダ式
slot-name - シンボル
slot-initform - フォーム
slot-read-only-p - generalized-boolean
structure-name - シンボル
type - 次の型指定子のどれかであり、 list
, vector
, (vector size)
, あるいはその他の実装で適用可能な定義された型指定子。
documentation - 文字列。評価されません。
defstruct
は構造体の型を定義し、 その名前はstructure-typeであり、 slot-optionによって指定された名前付きのスロットが付きます。
defstruct
は、 スロットを読み込むリーダーと、 そのようなリーダーをsetf
上で正しく動作する 修正する機能を定義します。 無効にしない限り、 name-p
という名前の述部と、 make-
constructor-nameという名前の生成関数、 copy-
constructor-nameというコピーの関数が定義されます。 これらの全ての名前の関数は自動的に生成され、 自動的にinline
として宣言されます (実装が区別できる場合)。
documentationが与えられると、 structure-nameがドキュメント文字に与えられ、 種別structure
と共に割り当てられます。 また:type
が指定されていないときは、 structure-nameがドキュメント文字、 種別がtype
という、 クラス名がstructure-nameの クラスオブジェクトのための割り当てが行われます。
defstruct
は、 本機能によって作成された構造体のインスタンスを生成するために使われる 構築関数を定義します。 標準の名前はmake-
structure-nameです。 引数のconstructorオプションによって与えられた名前によって、 違う名前を付けることができます。 nil
が指定されたときは、 構築関数は作成されません。
新しい構造体の型が定義された後は、 その型のインスタンスは通常はその型の構築関数を使うことで作成できます。 構築関数の呼び出しは、次のようなフォームになります。
(constructor-function-name-1 form-1
slot-keyword-2 form-2
slot-keyword ...)
構築関数の引数は、全てキーワード引数です。 各キーワード引数のスロットは、 構造体のスロットの名前に対応したキーワードの 名前でなければいけません。 全てのkeywordとformは評価されます。 もしスロットがこの方法で初期化されないときは、 それは構築関数呼び出し時にスロットの定義内の slot-initformを評価することによって初期化されます。 もしslot-initformが与えられなかったとき、 何かの値が明に代入される前に そのスロットを読み込もうとしたときの結果は未定義です。
defstruct
で指定された各slot-initformの要素は、 構築関数が指定されてない要素以外にに対して使われたとき、 slot-initformは構築関数を呼び出すたびに再評価されます。 slot-initformは、 特定の構造体インスタンスの生成に必要になるまで 評価されません。 もし決して必要としないのであれば、 スロット定義の型を指定したとしても、 決して型の不適合によるエラーは発生しません。 この場合、警告は発生されません。 例えば、下記の一連のフォームは、最後の呼び出しでのみエラーが生じます。
defstruct person (name 007 :type string))
(:name "James")
(make-person (make-person)
これは構築関数のキーワードパラメーターが slot-initformの初期化フォームとして使用されたかのように動作します。
スロットの名前のシンボルは、実装において 構築巻子のラムダ式の変数にその名前を使用してはいけません。 なぜならそれらのシンボルは、special
に宣言されたり、 その名前で定数変数が定義されるかもしれないからです。 スロットのデフォルトの初期化フォームは、 defstruct
フォーム自身が現れた レキシカルな環境内で評価されます。 あるいは構築関数の呼び出しが現れた 動的な環境で評価されます。
例えば、もし(gensym)
フォームが初期化フォームとして 構築関数の呼び出し内か、 あるいはdefstruct
によるデフォルト初期化フォーム内かの どちらかで使われたとき、 全ての構築関数の呼び出しにおいて、 gensym
が一度だけ呼ばれて 新しいシンボルを生成します。
defstruct
の各slot-descriptionは、 ゼロかあるいは複数のslot-optionを指定できます。 slot-optionはキーワードと値 (評価されるフォームではなく値はそれ自身) のペアを含みます。 例えば、
defstruct ship
(0.0 :type short-float)
(x-position 0.0 :type short-float)
(y-position 0.0 :type short-float)
(x-velocity 0.0 :type short-float)
(y-velocity :type short-float :read-only t)) (mass *default-ship-mass*
これは、各スロットが常にshort-float
を含み、 最後のスロットは一度ship
を構築したら 変更不可能なスロットとして定義されています。
利用可能なslot-optionは下記の通り。
:type
type
:read-only
x
setf
は受け付けません。 もしxがfalseなら、そのslot-optionは効果を持ちません。 xは評価されません。 下記のキーワードオプションは、defstruct
で使うことができます。 defstruct
オプションは、 キーワードか、キーワードとそのキーワードの引数のリストの どちらかを指定できます。 キーワード自身が指定されたときは、 そのキーワードと引数なしのリストを指定したことと同じです。 defstruct
オプションの構文は、 slot-optionが使われたペアの構文と違っています。 これらのオプションどのどの部分も評価されません。
:conc-name
:conc-name
は別のプレフィックスを使用するときに指定します。 もしセパレーターとしてハイフンを使用したいのであれば、 プレフィックスの部分としてそれを指定しなければなりません。 もし:conc-name
がnil
のときか引数を指定しなかった場合は、 プレフィックスは使用されません。 したがって、リーダー関数の名前はスロットの名前と同じになります。 もしプレフィックスにnil
以外が指定されたとき、 各スロットのリーダー関数の名前は、 プレフィックスとスロットの名前を結合したもので構築され、 その結果のシンボルをdefstruct
フォームが展開された時点での 現在のパッケージにintern
したもにになります。 :conc-name
に何を与えても、 プレフィックスの付いていないスロット名とのキーワードが コンストラクタ関数で使用されることに注意してください。 リーダー関数の名前は、setf
の引数にも使用されます。 下記に例を示します。defstruct (door (:conc-name dr-)) knob-color width material) => DOOR
(setq my-door (make-door :knob-color 'red :width 5.0))
(=> #S(DOOR :KNOB-COLOR RED :WIDTH 5.0 :MATERIAL NIL)
=> 5.0
(dr-width my-door) setf (dr-width my-door) 43.7) => 43.7
(=> 43.7 (dr-width my-door)
:conc-name
オプションが明に指定されたかどうかに関わらず、 次の規則が生成されるリーダー(あるいはアクセッサ)の名前の 衝突を管理します。 ある構造体の型をS1
、 スロットの名前がX1
であり、 そのリーダー関数の名前がR
とします。 これは他の構造体のS2
によって継承されています。 S2
はスロットX2
があり、 同じ名前のリーダー関数R
を指定しています。 S2
はまだR
の定義を生成しておらず、 かわりにS1
の定義から定義R
が継承されています。 (このような場合、もしX1
とX2
が違うスロットのときは、 実装はstyle-warning
を通知するかもしれません) :constructor
nil
ではないとき、 その引数は構築関数の名前を指定したシンボルです。 もし引数が指定されなかったとき (あるいはもし自身のオプションが指定されなかったとき) 構築の名前は、文字列"MAKE-"
と構造体の名前を結合したものを生成し、 その名前をdefstruct
フォームが展開された時点の 現在のパッケージにintern
したもにになります。 もし引数がnil
で与えられたときは、 構築関数は定義されません。 :constructor
が(constructor name arglist)
として与えられたとき、 キーワード駆動の構築関数の作成のかわりに、 defstruct
は「位置的な」構築関数を定義します。 それは引数の位置かあるいは場合によってはキーワードによって 決定される意味を持つ引数を取ります。 arglistはどの引数を構築するかを定義したものとして使われます。 単純な場合として、 例えば(:constructor make-foo (a b c))
のようなものは、 make-foo
を3つの引数の構築関数として定義し、 それらの引数はスロットの名前a
, b
, c
の初期化に使用されます。 boa
構築として知られています。 boa
構築がどのように処理されるかの情報は、 3.4.6. boa
ラムダリストをご確認ください。 :constructor
オプションは複数許容され、 それぞれ違ったパラメーターを取る いくつかの構築関数を定義することができます。 defstruct
は :constructor
オプションが明に指定されていないときか、 :constructor
オプションが名前の引数なしに指定されていたときのみ デフォルトの名前をキーワードの構築関数を作成します。 (:constructor nil)
は、 他の構築関数のオプションが指定されていないときにのみ意味します。 それはdefstruct
による他の全ての構築関数の生成を禁止します。 defstruct
は、 指定された各:constructor
オプションにしたがって 構築関数を生成します。 これは複数のキーワードによる構築関数を指定するのと同様に、 複数のboa
構築を指定することも許されます。 :copier
"COPY-"
と構造体の名前を結合したものを生成し、 その名前をdefstruct
フォームが展開された時点の 現在のパッケージにintern
したもにになります。 もし引数がnil
で与えられたときは、 コピー関数は定義されません。 defstruct
の:type
オプションが使われなかったときは、 下記のものと同等になります。 (copier-name x) = (copy-structure (the structure-name x))
:include
defstruct person name age sex) (
astronaut
は、 name
, age
, sex
という属性と、 person
構造体の操作関数、 astronaut
が定義した:include
を 次のようにして作成します。defstruct (astronaut (:include person)
(:conc-name astro-))
(
helmet-size (favorite-beverage 'tang))
:include
は、その構造体がincludeされた構造体と 同じスロットを持つように定義するものです。 このような方法で作成されたものは、 includeされた構造体のリーダー関数もまた、 今回定義した構造体で使用できます。 この例では、したがってastronaut
では5つのスロットを持ちます。 その内訳は、3つがperson
の定義であり、 2つがastronaut
自身のものです。 person
構造体によって定義されたリーダー関数は、 astronaut
構造体のインスタンスでも適用でき、 そしてそれは正しく動作します。 さらにastronaut
はそれらの要素に対する 自分自身のリーダー関数も定義されます。 下記の例は、astronaut
構造体を使用したものです。setq x (make-astronaut :name 'buzz
(45.
:age t
:sex 17.5))
:helmet-size => BUZZ
(person-name x) => BUZZ
(astro-name x) => TANG
(astro-favorite-beverage x) reduce #'+ astros :key #'person-age) ; 空かもしれないastrosシーケンスの
(; 年齢の合計を得ます
person-name
とastro-name
の違いは、 person-name
はastronaut
を含むどのperson
にも正しく適用できますが、 astro-name
はただastronaut
のみ正しく適用できます。 実装はリーダー関数を使用するときに正しく確認しないかもしれません。 defstruct
に 多くてもひとつの:include
を指定できます。 :include
の引数は要求され、 以前に定義された何かの構造体の名前でなければなりません。 もし構造体の定義に:type
オプションがないときは、 includeされる構造体もまた:type
オプションを 指定されていてはいけません。 もし構造体の定義に:type
オプションがあるときは、 includeされる構造体は 同じ表現の型を指定した:type
オプションで 定義されていなければなりません。 :type
オプションがないとき、 includeされた構造体の名前はデータ型の名前であり typep
によって認識できる正当な型指定子なので、 これはinclude構造体のサブタイプになります。 上記の例の場合、astronaut
はperson
のサブタイプです。 したがって、typep (make-astronaut) 'person) => true (
person
の全ての操作がastronaut
でも動作することを示しています。 :include
を使用した構造体は、 その:include
オプションを使用することで、 include構造体が指定したものとは違ったスロットの デフォルト値かslot-optionをしていることができます。 例えば下記の通り。 (:include included-structure-name slot-description*)
astronaut
のage
をデフォルトを45
にしたものは下記の通り。defstruct (astronaut (:include person (age 45)))
(
helmet-size (favorite-beverage 'tang))
:include
を:type
オプションと一緒に使用したとき、 その効果は、まず最初にinclude構造体の表現で必要な 要素の数だけスキップします。 さらに:initial-offset
オプションの指定による 追加の要素をスキップします。 そのあとで、この点から要素の確保が始まります。 例えば下記の通り。defstruct (binop (:type list) :named (:initial-offset 2))
(:type symbol)
(operator '? -1
operand-2) => BINOP
operanddefstruct (annotated-binop (:type list)
(:initial-offset 3)
(
(:include binop))identity) => ANNOTATED-BINOP
commutative associative
(make-annotated-binop :operator '*-1 'x
:operand-2 5
:operandt
:commutative t
:associative 1)
:identity => (NIL NIL BINOP * X 5 NIL NIL NIL T T 1)
:initial-offset
defstruct (binop (:type list) (:initial-offset 2))
(:type symbol)
(operator '? -1
operand-2) => BINOP operand
make-binop
の動作と返却値を下記に示します。-1 'x :operand-2 5)
(make-binop :operator '+ :operand=> (NIL NIL + X 5)
-2 4 :operator '*)
(make-binop :operand=> (NIL NIL * NIL 4)
defstruct (binop (:type list) :named (:initial-offset 2))
(:type symbol)
(operator '? -1
operand-2) => BINOP operand
make-binop
の動作と返却値を下記に示します。-1 'x :operand-2 5) => (NIL NIL BINOP + X 5)
(make-binop :operator '+ :operand-2 4 :operator '*) => (NIL NIL BINOP * NIL 4) (make-binop :operand
nil
の要素は、 binop
の定義にある:initial-offset
の2
のものです。 次の4つの要素は構造体の名前と、 binop
の3つのスロットが含まれています。 :named
:name
は、構造体に名前を付けるよう指定します。 もし:type
が指定されていないときは、 構造体は常に名前付けられます。 defstruct (binop (:type list))
(:type symbol)
(operator '? -1
operand-2) => BINOP operand
make-binop
という構築関数と3つの選択関数である binop-operator
, binop-operand-1
, binop-operand-2
を定義します。 (しかし下記に説明する理由にてbinop-p
は定義されません) make-binop
の効果は単純に3つの長さのリストを構築します。-1 'x :operand-2 5) => (+ X 5)
(make-binop :operator '+ :operand-2 4 :operator '*) => (* NIL 4) (make-binop :operand
list
関数のようですが、 キーワード引数を受け取ることと、 binop
というデータ型という概念に適用した スロットの標準値を用意する点が違っています。 同じように、3つの選択関数である binop-operator
, binop-operand-1
, binop-operand-2
は、 それぞれcar
, cadr
, caddr
と本質的に同等です。 これらは完全には同等ではないでしょう。 なぜなら、例えばある実装では 各選択関数の引数が長さ3
のリストであるかどうかを 保証するためのエラーチェックを追加するような 正当化を行うかもしれません。 binop
はデータ型という概念であって、 Common Lispの型システムの一部ではありません。 typep
はbinop
を型指定子として認識しませんし、 type-of
はbinop
構造体を与えても list
と返却します。 make-binop
で構築されたデータ構造と、 正しい構造を持つその他のリストを 区別する方法はありません。 make-binop
によって作成された構造体から 構造体名binop
を知る方法はありません。 これは構造体に名前がついているときのみ行うことができます。 名前付き構造体は、その構造体のインスタンスが与えられたときに、 構造体名(型の名前)を確実に復元できるという性質を持っています。 :type
オプションなしで定義された構造体では、 構造体名は実際にCommon Lispのデータ型システムの一部になります。 このような構造体をtype-of
に適用したとき、 そのオブジェクトの型の構造体名が返却されます。 typep
は正当な型指定子として構造体名を認識します。 :type
オプションと一緒に定義された構造体について、 type-of
は、list
か(vector t)
のように 指定した:type
オプションに依存したものが返却されます。 構造体名は有効な型指定子にはなりません。 しかし、もし:named
オプションが指定されていたときは、 構造体(defstruct
の構築関数によって作成されたもの)は、 常に構造体名を含みます。 これは構造体のインスタンスから構造体名を知ることができるということと、 概念的な型に対しての適切なpredicate
を 定義することができるということです。 自動的に定義されるname-p
という構造体のpredicate
は、 最初にその引数が正当な型(list
, (vector t)
, その他)で あるかどうかを確認し、 そのあと最初の要素が 適切な型の名前を含んでいるかどうかを確認します。 binop
を考えます。 これは:named
オプションを追加しただけのものです。defstruct (binop (:type list) :named)
(:type symbol)
(operator '? -1
operand-2) => BINOP operand
make-binop
と3つの選択関数 binop-operator
, binop-operand-1
, binop-operand-2
が定義されます。 make-binop
の効果は、今回のものは4つの長さのリストを構築します-1 'x :operand-2 5) => (BINOP + X 5)
(make-binop :operator '+ :operand-2 4 :operator '*) => (BINOP * NIL 4) (make-binop :operand
defun binop-p (x)
(and (consp x) (eq (car x) 'binop))) => BINOP-P (
binop
という名前はまだtypep
で識別できるような 有効な型指定子ではありませんが、 しかし少なくともbinop
構造体と他の似たような定義の構造体と 区別をつける方法はあります。 :predicate
predicate
の名前を指定したものです。 もし引数が指定されないか、オプション自身が指定されなかったときは、 predicate
の名前は、構造体の名前と文字列"-P-"
を結合したものを生成し、 その名前をdefstruct
フォームが展開された時点の 現在のパッケージにintern
したもにになります。 もし引数がnil
で与えられたときは、 predicate
関数は定義されません。 predicate
を定義できるのは構造体に名前がついているときであり、 もし:type
が指定されて、かつ:named
が指定されなかったときは、 :predicate
は指定しないかあるいは:nil
の値を 指定するかのどちらかでなければなりません。 :print-function
, :print-object
:print-function
と:print-object
のオプションは、 型structure-nameの構造体のための print-object
メソッドを生成します。 これらのオプションは同義語ではありませんが、 似たような機能を提供します。 これらのオプションの選択(:print-function
か:print-object
)は、 どのようにしてprinter-nameという関数を呼び出すのかに影響します。 これらのオプションはただひとつだけ使うことができます。 そしてこれらのオプションは:type
が指定されなかったときのみ使用できます。
もし:print-function
オプションが使われたとき、 構造体の名前structure-nameが印字されるときに 指定されたprinter
関数が次の3つの引数と共に呼び出されます。
*print-level*
と比較することで 信頼性を高めることができます。(:print-function printer-name)
の指定は、 おおよそ次のものと同一です。
defmethod print-object ((object structure-name) stream)
(funcall (function printer-name) object stream <<current-print-depth>>)) (
<<current-print-depth>>
は、現在の印字がどれくらい深いのかという プリンターの値を表現したものです。 <<current-print-depth>>
が常に0であり、 *print-level*
がnil
でない場合、 印刷が再帰的に下降するにつれて順次小さな値に再束縛されるか、 あるいは、同じ走査中に印刷が再帰的に下降するにつれて current-print-depth
の値が変化し、 *print-level*
が一定のままであるかは 実装依存です。
もし:print-object
オプションが使われたとき、 構造体の名前structure-nameが印字されるときに 指定されたprinter
関数が次の2つの引数と共に呼び出されます。
(:print-object printer-name)
の指定は、 おおよそ次のものと同一です。
defmethod print-object ((object structure-name) stream)
(funcall (function printer-name) object stream)) (
:type
オプションが指定されなかったとき、 さらに:print-function
か:print-object
オプションが指定され、 そのprinter-nameが指定されなかったときは、 print-object
メソッドは structure-nameでspecialized
されたメソッドを生成し、 実装の関数である#S
表記を用いた構造体の 標準的な印刷を呼び出します。 22.1.3.12. 構造体の印字をご確認ください。 :print-function
と:print-object
の どちらのオプションも指定されなかったときは、 defstruct
はstructure-nameに特化した print-object
メソッドは生成せず、 :include
オプションによって指定された構造体のものか、 あるいは構造体の印刷のデフォルトの動作のものかが 標準的なふるまいとして継承されます。 print-object
関数と、22.1.3.12. 構造体の印字をご確認ください。 *print-circle*
がtrueのとき、 ユーザーが定義した印刷関数は オブジェクトを印刷するときに 指定されたストリームを用いてwrite
, prin1
, princ
, format
を使用できますが、 循環構造を検出したときは#n#
構文を用いた印刷がされます。 これは、print-object
に :print-function
オプションで追加されたメソッドを適用できます。 もしユーザーが定義した印刷関数が 指定されたもの以外のストリームに対して行われたとき、 循環構造の検出はそのストリームでやり直しされます。 *print-circle*
変数をご確認ください。 :type
:type
は構造体が使用する表現を明確に指定します。 この引数は、下記のどれかでなければなりません。
vector
(vector t)
として指定された結果と同じものが生成されます。 この構造体は一般的なvector
として表現され、 vector
の要素に値が保存されます。 もし構造体に:name
が指定されていたときは、 最初の要素はvector
の1番目の要素であり、 指定されていないときは0番目の要素です。 (vector element-type)
vector
として表現され、 vector
の要素に値が保存されます。 全ての要素は指定された型のvector
に 格納できるような型でなければなりません。 もし構造体に:name
が指定されていたときは、 最初の要素はvector
の1番目の要素であり、 指定されていないときは0番目の要素です。 list
このオプションの指定は、 特定の表現へ強制する効果があり、 defstructで指定された順序で 対応する連続した要素を指定した表現で 格納する効果があります。 これは構造体名がtypep
によって識別できる 有効な型指定子になることも禁止します。
例えば下記の例を考えます。
defstruct (quux (:type list) :named) x y) (
list
関数を使用したかのように、 car
がquux
であるようなリストを生成する 構築関数を作らなければいけません。 deftype quux () '(satisfies quux-p)) (
typep (make-quux) 'quux) (
typep (list 'quux nil nil) 'quux) (
:type
が指定されなかったときは、 構造体は型structure-object
の オブジェクトとして表現されます。 :type
オプションがないdefstruct
は、 構造体名のクラスを定義します。 構造体のインスタンスのメタクラスはstructure-class
です。 defstruct
の構造体を再定義したときの結果は未定義です。
defstruct
に何もオプションを指定しなかった場合は、 新しい構造体のインスタンスでは 次のような操作を行う関数が自動的に定義されます。
predicate
-p
という名前のpredicate
が定義され、 構造体の型のメンバーかどうかをテストします。 predicate
の呼び出し(structure-name-p object)
は、 objectがその型であればtrueを、 そうでなければfalseを返却します。 typep
もまた新しい型の名前を objectがその型に属したものかどう かテストする際に使用できます。 このような関数の呼び出しは (typep object 'structure-name)
というフォームを持ちます。 structure-name-slot-name
という名前で生成されます。 この関数は指定されたスロットの内容を読み込みます。 各リーダー関数は引数に構造体型のインスタンスをひとつ取ります。 setf
は、変更可能なスロットに対して リーダー関数を指定することで使用できます。 make-structure-name
という名前で定義されます。 この関数は構造体型の新しいインスタンスを生成した返却します。 copy-structure-name
という名前で定義されます。 コピー関数は構造体型のオブジェクトを引数に取り、 同じ型の新しいオブジェクトを作成してそのコピーを行います。 コピー関数は元のものと全体の構成が同じである新しい構造体を作ります。 2つの構造体インスタンスの各要素はeql
で等しくなります。 もしdefstruct
フォームがトップレベルフォームとして現れたとき、 コンパイラーは構造体の型を後続の宣言(例えばdeftype
)で 有効な型として認識できるようにし、構造体のスロットのリーダーを setf
で使用可能にしなければなりません。 さらにコンパイラーは同じファイルで構造体名を参照する 別のdefstruct
定義で:include
を使用できるように 構造体の型についての十分な情報を保存しなければなりません。 defstruct
が生成する関数はコンパイル時の環境で 定義する必要はありませんが、 コンパイラーは後続のinline
呼び出しのために、 関数のコードに関する十分な情報を保存する必要があるかもしれません。 #S
リーダーマクロは、コンパイル時に新しく定義された構造体型については 認識するかもしれませんししないかもしれません。
構造体の定義の例を下記に示します。
defstruct ship
(
x-position
y-position
x-velocity
y-velocity mass)
これは全てのship
が5つの名前を持った要素持つ オブジェクトであると宣言しています。 このフォームの評価は、次のことを行います。
ship-x-position
というひとつの引数ship
を受け取る関数を定義し、 それはship
のx-position
を返却します。 ship-y-position
とその他の要素も似たような関数の定義が与えられます。 これらの関数はアクセス関数と呼ばれ、 構造体の要素にアクセスするときに使用されます。
ship
は、ship
のインスタンスの型の名前になります。 ship
はtypep
で使用可能であり、 例えば(typep x 'ship)
はx
がship
のときはtrueに、 x
がship
以外のオブジェクトのときはfalseになります。
ship-p
という名前のひとつの引数を取る関数が定義されます。 これはpredicate
であり、引数がship
のときはtrueを、 それ以外のときはfalseを返却します。
make-ship
と呼ばれる関数が定義され、 起動されると5つの要素を持つ構造体のデータが作成されます。 各要素にはアクセス関数を使うのが適切です。 下記の実行がなされたとき、
setq ship2 (make-ship)) (
ship2
には新しいship
オブジェクトがセットされます。 初期値を希望する要素に供給したい場合は、 make-ship
の呼び出しにキーワード引数を使います。 例えば下記の通り。setq ship2 (make-ship :mass *default-ship-mass*
(0
:x-position 0)) :y-position
ship
が構築され、3つの要素に初期化されます。 この関数は新しい構造体を作成するので「構築関数」と呼ばれます。copy-ship
と呼ばれる引数をひとつ受け取る関数が定義されます。 引数がship
オブジェクトのとき、新しいship
オブジェクトが生成され 引数のものをコピーします。この関数は「コピー関数」と呼ばれます。setf
はship
の変更可能な要素に使うことができます。
setf (ship-x-position ship2) 100) (
これはship2
のx-position
を100
に変更しています。 これはdefstruct
の動作として、 各アクセス関数に対してdefsetf
を適用するように 生成しているので動作します。
;;;
;;; 例1
;;; 構造体型townの定義
;;; area, watertowers, firetrucks, population, elevation が要素
;;;
defstruct town
(
area
watertowers1 :type fixnum) ;初期化スロット
(firetrucks
population 5128 :read-only t)) ;スロットは変更不可
(elevation => TOWN
;townインスタンスの作成
setq town1 (make-town :area 0 :watertowers 0)) => #S(TOWN...)
(;townのpredicateは新しいインスタンスを認識できる
=> true
(town-p town1) ;新しいtownのareaはmake-townによって設定
=> 0
(town-area town1) ;新しいtownのelevationは初期値
=> 5128
(town-elevation town1) ;setfはリーダー関数を認識できる
setf (town-population town1) 99) => 99
(=> 99
(town-population town1) ;コピー関数はtown1のコピーを作る
setq town2 (copy-town town1)) => #S(TOWN...)
(= (town-population town1) (town-population town2)) => true
(;elevationは読み込み専用スロットなのでこの値は
;構造体が作成されたときのみ設定できる
setq town3 (make-town :area 0 :watertowers 3 :elevation 1200))
(=> #S(TOWN...)
;;;
;;; 例2
;;; 構造体型clownの定義
;;; この構造体は非標準のprefixを使う
;;;
defstruct (clown (:conc-name bozo-))
(
(nose-color 'red) => CLOWN
frizzy-hair-p polkadots) setq funny-clown (make-clown)) => #S(CLOWN)
(;非標準のリーダーの名前を使う
=> RED
(bozo-nose-color funny-clown) defstruct (klown (:constructor make-up-klown) ;キーワードの変更以外は
(:copier clone-klown) ;似たような定義
(:predicate is-a-bozo-p))
(=> klown
nose-color frizzy-hair-p polkadots) ;変更した構築関数が今存在する
fboundp 'make-up-klown) => true
(;;;
;;; 例3
;;; 構造体型vehicleの定義
;;; その後vehicle構造体をincludeした
;;; truck構造体を定義する
;;;
defstruct vehicle name year (diesel t :read-only t)) => VEHICLE
(defstruct (truck (:include vehicle (year 79)))
(
load-limit 6)) => TRUCK
(axles setq x (make-truck :name 'mac :diesel t :load-limit 17))
(=> #S(TRUCK...)
;vehicleリーダーがtruckで動作する
(vehicle-name x)=> MAC
;デフォルト値は:include項指定のもの
(vehicle-year x)=> 79
defstruct (pickup (:include truck)) ;pickup型はtruckをinclude
(=> PICKUP
camper long-bed four-wheel-drive) setq x (make-pickup :name 'king :long-bed t)) => #S(PICKUP...)
(;:includeのデフォルト値は継承されたもの
=> 79
(pickup-year x) ;;;
;;; 例4
;;; BOA構築の使用
;;;
defstruct (dfs-boa ;BOA構築
(:constructor make-dfs-boa (a b c))
(:constructor create-dfs-boa
(rest d &aux e (f 'ff))))
(a &optional b (c 'cc) &=> DFS-BOA
a b c d e f) ;a, b, cは位置によって設定し、&restは初期化しない
setq x (make-dfs-boa 1 2 3)) => #(DFS-BOA...)
(=> 1
(dfs-boa-a x) ;aとbはセット、cとfはデフォルト
;a and b set, c and f defaulted
setq x (create-dfs-boa 1 2)) => #(DFS-BOA...)
(=> 2
(dfs-boa-b x) eq (dfs-boa-c x) 'cc) => true
(;a, b, cはセット、&restはdに集められている
setq x (create-dfs-boa 1 2 3 4 5 6)) => #(DFS-BOA...)
(=> (4 5 6) (dfs-boa-d x)
なし。
もし2つのスロットの名前が (直接現れたか、:include
オプションによって継承されたかに関わらず) string=
で等しいときは、 defstruct
は型program-error
のエラーが発生します。
included-structure-nameが構造体型の名前ではないときの結果は未定義です。
documentation
, print-object
, setf
, subtypep
, type-of
, typep
, 3.2. コンパイル
printer-nameはプリンターを制御する *print-escape*
のような変数を見なければなりません。
slot-initformと対応するスロットの:type
オプション間では、 型の不一致による警告を禁止する必要があります。 なぜなら、スロットオプションを指定するために slot-initformを指定する必要があり、 場合よっては適切なデフォルト値が存在しないかもしれません。
defstruct
がsetf
の使用による スロットのアクセッサを変更する仕組みは 実装依存です。 例えば、これはsetf
関数か、setf
展開か、 あるいはその他のsetf
への実装コードとして知られている 実装依存の仕組みなどが使われます。